日本共産党横浜市会議員
古谷やすひこ古谷議員:
次に、本市のIRという名のカジノの誘致の問題について、伺います。
史上最長に延長された先の国会でも、カジノ議案は1回も議論されることなく終わりました。そんな中で、本市は昨年も1,000万円、今年も1,000万円の予算を計上して、カジノ誘致に向けての調査を行っています。そこで、昨年本市が依頼して「IR等新たな戦略都市づくり・検討調査報告書」について、順次伺っていきます。
私たちは、この報告書を専門家に依頼して分析をしてまいりましたが、一言で言って、結論の出し方が恣意的で、数字の当てはめ方も非常に乱暴だと感じています。
まず、カジノ導入についての影響評価ですが、プラスの影響だけではなく、マイナスの影響も含めて論じなければ、正確な影響評価はできないと思います。たとえば、アメリカのニューハンプシャー州のカジノ導入の際の報告書では、ギャンブル依存症対策の公的負担やギャンブル依存症者の増大による社会的コストの推計を行った上で、自治体にとって財政的にプラスなのかマイナスなのか、総合的な評価をしています。今回の報告書には一切そういったマイナス効果についての数字的言及がありません。
市長、これはカジノ誘致による経済効果を願う立場の方から見ても、政策判断を誤るような内容的に非常に不十分な報告書だと思いますが、見解、伺います。
林市長:
昨年度実施した委託検討調査でございますが、IRの基礎的な内容を把握するために実施いたしました。具体的には、IRの概要や諸外国における導入の効果のほか、カジノにより懸念される事柄とその対策などを整理したほか、産業連関分析により一般的な経済効果の算出などを取りまとめたということでございます。
古谷議員:
プラスの効果は無理やり数字を出しているんです。マイナス効果は、述べただけで、数字的には言及していません。これは間違いありません。
たとえば、横浜のIRカジノへの訪問客数567万人来ると推定されています。前提となっている博報堂の調査、これは「全国20の都市にカジノができるという前提で、あなたはカジノに行きたいと思いますか」という質問です。これを、横浜の報告書では、東日本でIRに行きたい人ということは、全て横浜に行きたい人というふうに読み替えさせています。こんな、あまりにもひどい推計だというふうに思っています。
市長は、このIR誘致に向けてこの間積極的な発言をされています。9月5日付けの神奈川新聞では、「すごく有力な手段で、これからの横浜の経済成長には非常に重要なこと」だと、横浜の商工会議所の佐々木会頭との懇談でお話ししていると出ています。なぜそこまで前のめりで、市長はIRを導入すれば経済効果があがると信じておられるのか、その根拠は何か、伺います。
林市長:
IRは、今年6月国が成長戦略として閣議決定した日本再興戦略においても、観光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待されるとして位置づけられております。
私が前のめりっていう言い方、今、先生おっしゃったんですが、別の機会にも話をしておりますが、東京都の隣におりまして、法人税が1兆3,000億でしたか、それ近く入る東京都と、372万人もいながら法人税が640億程度というこの横浜市。なんとあっても、私も先生と同じで、福祉とか医療とか子育て支援、そういうことが本当に大事だと思いますが、いかんせん税収がなければやりきれないところでございます。ですから、そういう意味で、これだけの上場企業の格差がある950に対して53しか上場企業がないっていうことで、税収で非常に苦しんでおりますから、そういう意味で有力な手段のひとつだというふうに考えております。
ただ、懸念される事柄というのは、すごっくあるわけですよね。そういうことについても、国もすごく検討しておりますし、調査していくことは大事なことでございますので、引き続きマイナスの影響も含めて、検討してまいります。
古谷議員:
今回の本市の報告書の中で、犯罪の増大なんかについても触れてあります。しかし、これについては、カジノが犯罪を増加させるための十分なデータはないというような記述になっています。しかし、私たちは、報告書の検討を依頼した静岡大学の鳥畑教授によれば、これは意図的な歪曲であるというふうに指摘をしています。米国の報告書の原文のその部分を読めば、カジノがギャンブル依存症を増大させること、ギャンブル依存症の犯罪発生率が高いことを示しながら、しかしながらカジノと犯罪率の増大を定量的に結論付けるだけのデータが不足しているということで、今後の研究が必要であると結論を留保したにすぎません。カジノが犯罪を増大させないと結論づけたものではありません。さらに、その後に報告されているニューハンプシャー州報告書では、その後の研究成果を踏まえてカジノが犯罪を増大させることについては研究者の見解が一致していると、逆にこちらでは結論付けています。そして、議論はなぜカジノが犯罪を増大させるのかに移っています。
横浜市ならびに首都圏という人口密集地でカジノをつくることの弊害がこれから顕在化するのであり、大量のギャンブル依存症者やギャンブル被害者が生まれることになります。それに伴う自治体の費用増大や社会的コストの増大が、報告書に示されている60億円という税収増に見合うものになるのか疑問ですが、見解を伺います。
林市長:
カジノに対してはさまざまなご意見があると思います。そして、先ほども申し上げました最初の委託の検討調査というのはIRの基礎的な内容を把握するために実施したものでございますから,これが全部ベースになって、私どもが絶対IRへの導入の中のカジノがいいというふうに申し上げるものではございませんので、これから十分に調査検討を進めていかなくてはなりませんし、また国の方も法案が通っておりませんので、これも国の動向を見ていかなくてはならないというふうに私は思います。
もちろん先生ご懸念の犯罪の問題とか、いろいろな各国に事例もあるでしょうし、また逆にいい例もあると。先ほども何度も申し上げておりますけど、税収が厳しい、なかなか都市に一極集中していく隣で厳しい思いをしている中での有力なひとつの手段ではないかと、私、今現在考えているところでございますので、市民のみなさまにも先生のご懸念にもきちっとご説明ができるようにしてまいりたいと思います。まだ、そこまで行っている段階ではございませんけれども、そういうのを覚悟して、今厳重に調査もし、ご理解、納得していただいて、たとえばやるとすればできることであるかというふうに考えております。
古谷議員:
団として、この8月に韓国を訪れて、カジノとギャンブル依存症の関係について調査を行ってまいりました。韓国では、韓国人が入れるカンウォンランドを訪れる方は年間約300万人。その0.3%が依存症のリスクが高いといわれています。そのため、カンウォンランドカジノの真向かいには依存症対策センターが設置されており、入場制限を行うとともに、一定日数以上の入場者にはカウンセリングが義務付けられています。さらに、首都ソウルには、ギャンブル問題管理センターがあり、カジノだけではなく、公営ギャンブルである競輪・競馬を始め、違法のインターネットギャンブルなどの依存症などについて、予防、治療などを、今も行っています。
ひるがえって見れば、今の現状の横浜市でも、さまざまな公営ギャンブルの場外売り場があり、諸外国では完全にギャンブルであるパチンコ・パチスロはあちこちにある状況。昨年度で言えば、パチンコ屋内などでの刑法犯罪は警察庁の報告では2万人を超えています。そんな状況ですから、今でも依存症の対策、この横浜でも必要だと思いますが、市長の見解、伺います。
林市長:
現状では各区役所では心の健康相談センターにおいて、アルコールなどの依存症全般に係る相談の中で、いろいろそういうギャンブル依存症対策等々やっているわけでございます。具体的には相談の内容に応じて、専門の医療機関の受診や回復に向けた施設利用を促すなどの取り組みを行っております。ギャンブル依存症を含めた依存症への対策は、市民のみなさまの心の健康の保持・増進の観点から必要だと考えておりまして、今後とも専門の医療機関などの関係機関と連携をしながら、本人や家族への支援や職員の人材育成について引き続き取り組んでまいります。
古谷議員:
いろいろ言われたんですが、実際はほとんどやられてません。
あらためて、あらゆる点から見て、IR誘致はぜひやめるべきであるというふうに思いますし、いますぐにもギャンブル依存症の対策、これ横浜にも必要だというふうに主張しておきます。