ブログ

指定管理者制度は、結果的に非正規雇用の市民を生み出し続けるという、抜け出すことが出来ないループに陥ることになる! ~2015年12月4日 横浜市会第四回定例議会での宇佐美議員の議案関連質問から

指定管理者制度導入施設では非正規雇用が主流となってしまう仕組み

宇佐美議員:

次に、指定管理者の指定に関する市第104号議案から市第138号議案までのうち、指定管理者の指定については、地方自治法117条により、議員が直接利害関係のあることについてはその議事に参与することができないという規定により、106号、126号及び128号議案の3件を除く案件についてです。今回の指定対象となる施設は、約300です。その内訳は、従前の管理者が87%、従前の管理者から変更予定が8%、新規に管理者を指定予定が5%となっています。約300施設のうち株式会社が指定管理者となっているのは、61施設です。
今年7月3日、横浜市シルバー人材センター緑事業所が指定管理者の緑とコミュニティーグループから受注する長坂谷公園の管理業務について、神奈川労働局より労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第48条第1項に基づき、改善のための指導票が出されました。内容は、指定管理者である緑とコミュニティーグループから請負・委任を受けたシルバー人材センターの会員に対し直接作業指揮が命令され、始業、就業、就業日の指定などが行われるなど6項目におよびます。その全てが偽装請負にかかわるものです。
党市議団は、決算特別委員会でこの問題を取り上げ、その結果、シルバー人材センター所管の経済局からは11月26日付けで、緑とコミュニティーグループが指定管理者になっている10の公園の全業務においてシルバー人材センターからの会員を直接雇用に切り替え、神奈川労働局の指摘に基づいて適正就業に基づいた対応策を指摘された6項目に沿って行うとの報告がありました。しかし、なぜ労働局から指導票が出される事態になったのかを明らかにすることが必要です。
指定管理者制度運用マニュアルでは指定管理者による第三者への委託については、「その実態を必ず把握し、個別に状況を確認することが必要である」とし、指定管理者による労働関係法規の遵守を強く求めています。まさに、マニュアルが機能していなかったことが原因です。指定管理者制度のもとでの事業で、労働局から偽装請負にかかわり指導票が出される事態について、市長はどのように認識されているのか、伺います。
先日、党市議団は、有隣堂グループが管理・運営している山内図書館を視察しました。視察目的は、市内に設置・運営されている図書館のうち唯一株式会社に指定管理された図書館であることから、他の図書館との違いを知るためでした。中に入り、市民サービス等、他の図書館とは遜色なく、また館長の話では、入館者は増加しているとのことでした。しかし、事業報告書によれば、「貸出冊数・予約受付冊数・登録者数は減少傾向にあり、未登録者数を増やすことが課題であると考えている」となっています。昨年度の指定管理にかかる収支報告によると、公租公課が約555万円、本社経費として2,470万円が支出されています。本来、公営で行っていれば、この支出はしなくていいものです。指定管理者制度に代わったことで、市民の税金がこのような使われ方をすることについて、違和感を覚えます。
問題は、館長含め職員13人全員が1年更新の契約社員であることです。アルバイトが23人です。職員の推定平均年収は、収支報告書からの給与・賃金から試算すると、約320万円です。
図書館に指定管理者制度を導入することについて、元鳥取県知事で図書館経営に詳しい片山義博慶応大学教授は新聞報道で、「指定管理者は一般的に3年から5年。次の契約で、別の管理者に変わる可能性がある。スタッフも一年契約がほとんど。図書館は歴史や文化など、地域の知的財産を保存し、将来にわたって提供する施設。それに適した人材を時間をかけて養成するのに、この制度はなじまない」と、述べています。指摘された雇用の実態は、山内図書館も例外ではありませんでした。
同様に、今回提案されている横浜こども科学館の職員44名の内訳は、正規の職員が1名、非正規の契約社員が34名、アルバイト9名となっています。職員1人あたりの人件費は、事業者の収支報告書からの試算では、375万円です。これには法定福利費や通勤手当も含まれていますから、年収は350万円を下回ります。
事業者側からすれば、指定管理期間があるために、雇用者は契約社員とせざるを得ないという事情があるのです。それが指定管理者制度の根本的な欠陥の一つです。
このように、本市で指定管理者制度が導入された施設でも非正規雇用が主流となり、「官製ワーキングプア」が進行していると考えますが、市長の認識を伺います。
指定管理者制度は、定額の指定管理料の下で利益を上げるためには、いかに経費を削減するかにかかってきます。その最大の決め手は人件費を安く抑えることです。まさに、指定管理者制度を継続することは、結果的に非正規雇用による低賃金で不安定な労働条件で働く市民を生み出すという、抜け出すことが出来ない環(わ)・ループにますます陥ることになります。市長が本当に市民生活と雇用を守るとおっしゃるならば、営利企業の参入を規制し、直営施設であった施設については元の直営に戻すなど抜本的な見直しが必要と考えますが、市長の見解を伺います。

 

林市長:

市第104号議案から市第138号議案の指定管理者の指定について、ご質問いただきました。
指定管理者から受注した業務に関連して、労働局から指導票が出されたことについての見解ですが、横浜市シルバー人材センターが労働者を派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準に照らし、適切ではないという助言、指導を受けたことに関しては、本市も重く受け止めております。指導の対象となった公園の管理業務にかぎらず、シルバー人材センターの受託している他の業務に関しても、就業する会員のみなさまが安心して働くことができるよう、適正就業に向けてしっかりと改善してまいります。
指定管理施設の雇用についての認識でございますが、近年、働き方が多様化しております。基本的には雇用者と労働者の関係において、その雇用形態を選択しているのだと考えています。指定管理施設では、労働関係法規の遵守のもと、それぞれの設置目的を達成するために必要な体制になっていると認識をしています。
直営施設に戻すべきとのことでございますが、指定管理者制度は民間事業者のアイデアやノウハウを活用しながら、公の施設における市民サービスの向上と、経費の節減を図ることなどを目的として、適切に運用してまいりました。今後とも施設の特性に応じた適切な管理運営を進めてまいります。

 


2015-12-04 | ブログ

Top