日本共産党横浜市会議員
古谷やすひこ9月8日、いよいよ横浜市議会第三回定例会が開会しました。
日本共産党を代表して、北谷まり議員が初登壇して、以下の通り、マイナンバー制度の問題をしっかり追求しました。
北谷議員:最初に、マイナンバー制度に関係する市第44号議案ほか3議案についてです。マイナンバーは、住民票を有するすべての人に、1人1つの番号を付して、国・自治体が情報管理する制度です。
今年の6月、明らかになった日本年金機構の個人情報の大量流出は、公的機関の個人情報管理のぜい弱性と絶対安全などないことを示し、その後の対応から、マイナンバーに対して情報漏えいの国民の不信と不安は解消されないままとなっています。にもかかわらず、10月から住民一人ひとりに付された個人番号を通知する「通知カード」の郵送が開始され、2016年1月から個人番号の利用がはじまり、「顔写真入りの個人番号カード」の交付も開始されます。5月の常任委員会で出された資料では、マイナンバー制度導入の意義として、市民の利便性向上と行政の業務の効率化がうたわれていますが、果たしてそうでしょうか。
まず実務面では、導入前後には日常業務とマイナンバー関係業務とが重なり、また大勢の市民が来庁することが予想されることから、窓口では混雑・混乱が予測されます。問い合わせの対応に、国に加えて、市もコールセンターを設けるとしていますが、それで十分なのでしょうか。国のコールセンターは今でもほとんどつながらず、しかも有料です。横浜市の予算上で、個人番号カードの発行率は2%の約7万7,000枚しか見込まれていません。そのことから、単純計算すると98%の個人カードを持たない多数の市民が転居などの手続きの際、従来の本人確認に加え、通知カードの確認が加わるため、市民の待ち時間も増え、その結果、窓口の混雑・混乱は一過性のものでなくなります。これで利便性が向上すると言えるのか、市長の見解をあらためて伺います。
また、実際の住所と住民登録地の違う人、DVからの避難などで「通知カード」を受け取れないケース、介護施設などの入所者、住所不在者、住所不定者、「通知カード」返戻者に対する対応や、何らかの不備が生じた場合の対応、情報の不正持ち出しや、日本年金機構の事件のように、本市のシステム上、運用上の不備を原因として情報流出が起き、いったんインターネット上に出てしまえば、被害を取り返す手立てはないと考えますが、それについての見解を伺います。さらにそういうことが起きた場合、救済措置を考えているのか、あわせて伺います。今あげただけでも本市の行政の負担が増える制度だと思いますが、この点での市長の見解を伺います。
市民にとっては、個々の管理能力の有無に関係なく、「通知カード」が送付され、管理する負担と情報流出のリスクを、選択の余地もなく、一方的に負わされることになるわけです。例えば、増え続ける認知症の方への対応など、個々の状況に寄り添った対応が必要だと考えますが、市長の見解を伺います。
民間事業者にとっては、従業員とその家族の個人番号を収集・管理し、情報流出のリスクを抱え、セキュリティ対策などの負担が増すに過ぎません。これらの負担を市内の大多数を占める中小・零細企業に負わせることについて、どう考えておられるのか、伺います。
さらに、市民一人ひとりが、自分の個人番号を含む個人情報、いわゆる特定個人情報が、どのように使われているかを知るには、現在の市民情報室と区政推進課広報相談係に加えて、2017年1月からはインターネット上の情報提供等記録開示システム「マイナポータル」で知ることが可能としています。総務省は情報を流出させないよう、地方自治体に、個人情報を保管する基幹系ネットワークとインターネットに接続する情報系ネットワークを分離するよう求めています。実際、横浜市はそのようにしています。その一方で、市民が行政から得る個別の情報をインターネットから入手することができるように、推進するのはどう考えても矛盾ではないでしょうか。 マイナポータルの使用により、情報流出リスクがより高まるであろうことは容易に予測されることです。国は、法の実施前に利用範囲の金融、医療への拡大を強行し、さらに先々で不動産の登記情報等へのひも付けを検討しています。このことがリスクをさらに増大させることになると考えます。なぜなら、情報は集積されるほど利用価値が高まり、攻撃されやすくなるからです。市民の個人情報を保護する立場にある市長は、改正マイナンバー法に規定された適用の拡大、利用事務の拡大の検討を中止するよう、国に求めるべきではないでしょうか。市長の見解を伺います。
「通知カード」「個人番号カード」の盗難・紛失による被害だけでなく、発行時点でのなりすまし、また悪質な企業による不正利用や倒産等に伴い適正な情報管理がなされなくなるなど、雇用先企業を通じた情報流出の危険も否定することはできません。
上智大学の田島泰彦教授は、マイナンバー制度について「大量の個人情報の漏えいや不正使用、なりすましの危険が高まる一方で、個人情報が過度に官によって管理され、乱用される危険が大きい」と指摘。憲法が保障するプライバシー権にも抵触しかねないとして、制度自体を再検討するよう主張しています。また、市民グループが、「プライバシー権を保障した憲法13条に違反する制度だ」などと主張して、マイナンバー使用差し止めを求める訴えを全国で起こしていくとのことが報道されています。
イギリスでは、国家が国民の個人情報を収集するのは人権侵害に当たるとし、廃止に向かって検討、現在、共通番号制度は停止中とのことです。
米国では、2015年2月に約8,000万件のマイナンバー情報が漏えいし、韓国では、昨年、約2,000万件のマイナンバー情報が漏えいしています。また、2011年、米国ではある女性がマイナンバーを悪用され続け、高校卒業の時点でクレジットカードとローン口座を42件作成され、150万ドルの借金をされていたという事件も発生しており、2014年には、1,200万人以上のアメリカ人がなりすまし詐欺の被害にあっています。同2014年、不正に支払われた税の還付金は、58億ドルもなっています。アメリカ社会は他人の社会保障番号を使った「成りすまし犯罪者天国」と化していると、言われています。そして、「なりすまし被害」対策として、2011年から納税、高齢者医療など分野別番号を導入しています。マイナンバー制度を先行している国々で、制度見直しが行われている点からみても、これからマイナンバーをスタートさせるというのは、無謀すぎます。
2兆円から3兆円といわれるマイナンバー特需がいわれていますが、IT産業と関連業界のための「仕事おこし」に過ぎないと言っても過言ではありません。
根本的な問題である情報漏えいや監視社会への国民の不安がなくならず、また、実務面でも準備が大きく遅れているもとで、このままマイナンバー制度がスタートをしてしまうことは、今後大きな禍根を残すことになるのではないでしょうか。マイナンバー制度が実施されなくても、住民生活への不都合は生じません。マイナンバー制度は、税、社会保障の分野をはじめ、住民の個人情報、多くの行政手続きに関連し、地方自治体の根幹にかかわる問題ともいえます。住民の不安が高まっているなか、スケジュールありきで進めるのではなく、もう一度、制度を根本から見直すことが必要だと考えます。本市においては、10月からの番号通知の中止を求め、制度廃止に向けた議論を行うことを国に求めることが必要だと考えますが、市長の見解を伺います。