日本共産党横浜市会議員
古谷やすひこ古谷議員:
次に、市第188号議案「横浜市区役所事務分掌条例の制定」についてです。これは、2013年の第30次地方制度調査会の答申で、区の役割を拡充すべきと指摘されたことを踏まえて、区役所が分掌する事務を条例で定める等の地方自治法の一部改正が行われ、2016年4月に施行されることに伴い、横浜市における区役所の役割、事務分掌等を定めるものであります。従って、区の役割を今よりも拡充するために本条例は制定するものでなければいけません。しかし、本議案ではあくまでも現行の区行政の役割を整理した最小限の条例にとどまっています。
林市長も臨時委員として参画されて策定された第30次地方制度調査会の答申では、「『都市内分権』により住民自治を強化するため、区の役割を拡充することとすべき」と、明確に提言されています。さらに、その拡充する方向として「市の事務を区で所管すること」「区長に人事や予算の権限を付与すること」「区長を特別職とすること」「さらに住民自治を高める地域協議会等の仕組みを活用する」などが、具体的に答申では述べられています。しかし、本議案ではそれらの提言が何も具体化されていません。
そこで林市長に伺います。今回は地方制度調査会答申に基づいて国が地方自治法を改正し、本市が条例化したものであるのにもかかわらず、答申が活かされていないというふうに思います。市長は答申について、特に都市内分権の問題について、どう進めようとされているのか、見解、伺います。
同じく地方自治法の改正により、政令市の行政区を格上げして、権限の拡充を図る総合区の制度が新たに創設されたわけですから、住民に身近な区役所の権限を広げることができ、きめ細かな行政サービスの提供が可能となったわけですから、躊躇なく総合区制度に移行すべきと思いますが、市長の見解、伺います。
そして、区政に区民が参加できる仕組みとして、2004年の改正の地方自治法に規定された地域協議会の全市的な設置をすべきだと思います。地域協議会とは、区域内に係る重要事項について、市長が意見聴取をしたり市長に対して意見具申を行うことができるものであります。法改正が必要な大都市制度については相手があることですからなかなかすぐには進みませんが、都市内分権と住民自治の拡充の分野では市長がその気になればできることであります。いつまでも特別自治市の議論を重ねるばかりではなく、今できることから一歩でも始めるべきと思いますが、市長の決意、伺います。
林市長:
市第188号について、ご質問いただきました。
地方制度調査会答申を踏まえた都市内分権の進め方ですが、本市はこれまでも答申に盛り込まれた区の役割の拡充について、他の指定都市に先駆けて進めてきました。今後も、横浜の魅力である都市の一体性を活かしながら、区の機能強化や住民自治の強化に取り組んでいきます。
総合区制度についての見解ですが、横浜市では地域に身近な課題は区で解決できるよう、指定都市として最大限、区役所への権限、予算の強化を行っています。そうした中で、総合区については、現行の区との役割の整理や、区に移譲すべき事務権限の検討など課題がありますので、今の段階で導入することは考えておりません。
都市内分権についての決意ですが、市民のみなさまのくらしをしっかりと支えていくためにも、身近な行政サービスは区役所において可能な限り具体的に提供できるよう、区の機能強化をいっそう進めていくことが大切です。今後も市会のみなさまと議論を踏まえながら、都市内分権を進めてまいります。
古谷:
まず、市第186号議案「横浜市国際戦略」の策定についてです。本議案は、本市の国際活動に関する全庁的に共有すべき基本的な考え方を整理して、各区局の国際事業を横浜の成長につなげていくと提案理由では述べられています。
横浜は、太平洋戦争によって甚大な被害を受け、さらに港湾など重要施設・地区がほとんど米軍に接収され、都市としての機能が失われました。その後、市民などの努力によって徐々に復興を遂げ、また高度成長期の波に乗り、人口も増えました。横浜港は飛躍的な発展を遂げ、日本を代表する国際貿易港となりました。今までサンディエゴ市を皮切りに海外諸都市との姉妹・友好都市協定を、6つの港湾と姉妹友好貿易協力港提携を締結するなどして、1987年にそれまでの平和活動やあるいは海外諸都市等との交流を評価され、国際連合からピースメッセンジャー都市の称号が与えられました。さらに2010年には、「世界恒久平和の実現に寄与することを目的」としている平和市長会議に加盟しています。そんな歩みをしてきた横浜市が今回策定する国際戦略には、当然今まで歩んできた歴史をしっかりと引き継ぐべきであります。
しかし、本議案で出されている横浜市国際戦略には、いままで本市が歩んできた平和の取り組みが明らかに後景に追いやられています。たとえば、本戦略に統合・整理されたとする2007年に改定された「海外諸都市との都市間交流指針」には、その表紙の副題には「世界の平和と発展に貢献する都市をめざして」とあり、また都市間交流ビジョンとして長期的には「世界の平和と発展に貢献する都市」、中期的には「アジアの平和と発展に貢献する都市」と明確に定めています。しかし、本戦略にはその長期的ビジョンなどの記述が一切消えています。そればかりか、本戦略の4章に本市が国際的な事業を展開していく意義について、「本市が都市として持続的に成長していくための『投資』」だとされています。
これでは、今まで横浜が世界に向けて発信してきたメッセージを打ち消すような誤ったメッセージを世界に向けて発信することにはならないでしょうか。つまり、本市の国際戦略は、本市の直接的な経済成長のための経済戦略となっており、あまりにもこれまでの方針からは乖離して国際戦略を矮小化しすぎではないでしょうか。
そこで、市長に伺います。本計画の前段階である「横浜市海外諸都市との都市間交流指針~世界の平和と発展に貢献する都市をめざして~」で位置づけられている長期的都市間交流ビジョン「世界の平和と発展に貢献する都市」は取り下げたのでしょうか。伺います。
また、自治体は、国家同士で行うような外交を肩代わりすることはできませんし、しかし国家間で問題になるような軍事力や政治力、イデオロギーの衝突もありませんから、交流や友好・平和が自治体外交の基軸になるはずであります。地方自治体の国際戦略というものは、交流・友好・平和を高く掲げて、海外諸都市との互恵関係を築いていくことを目標にすべきです。本来の横浜としての自治体外交のあり方や海外諸都市との交流・友好関係を築くことで、国際平和に貢献するという高い見地での本戦略、見直すべきと思いますが、どうか伺います。
また、ピースメッセンジャー都市横浜、そして平和市長会の市長として林市長は、積極的に国際平和の構築に向けて不断の努力をしていくことを国内外にアピールすることによって、海外に進出している企業にとっては経済活動の障害がなくなり、さらにウィンウィンの関係で経済発展をしていく、そういった基盤になります。ぜひ市長、積極的に国際平和の構築に向けて憲法9条を積極的に活用して、たとえば平和都市宣言や非核都市宣言など目に見えるかたちでアピールして、世界に向けて発信していただきたいと思いますが、決意を伺います。
横浜市の国際戦略が海外諸都市から見たときに、互恵関係により発展させるものと、はたして見えるでしょうか。本戦略については、あらためて再考すべきと考えますが、どうか伺います。
林市長:
古谷議員のご質問にお答え申し上げます。
市第186号議案について、ご質問いただきました。
都市間交流指針における世界の平和と発展に貢献する都市というビジョンを取り下げたのかどうかですが、恒久平和の実現は長年にわたる人類共通の願いです。本戦略では、世界とともに成長する横浜という理念を掲げ、さまざまな国際事業を通じて国際社会が平和と発展に向けて貢献していきます。
国際平和に貢献するよう本戦略を見直すべきとのことについてですが、世界とともに成長する横浜をめざし、国際交流や協力などの国際事業に取り組むこと、これこそが国際平和につながるという考えのもとに策定をしております。
国際平和の構築に向けた施策を進め、世界に対して発信していく決意についてですが、本市は昭和62年に国際連合からピースメッセンジャー都市の認定を受けましたが、これは姉妹友好都市を中心とした海外諸都市との幅広い交流や国際機関等への協力が評価されたものです。引き続き、ピースメッセンジャー都市として、また平和市長会議の一員として、平和啓発事業、都市間交流や国際協力を通じ、国際平和の実現に向けた取り組みを行い、世界にアピールしてまいります。
横浜市国際戦略を互恵関係の観点から再考すべきとのことですが、本戦略では、世界とともに成長する横浜という理念を掲げています。海外諸都市との連携を深め、互いに価値を高め合い、政策課題の解決に向かう自治体外交を推進していきます。
(第2質問)
古谷議員:答弁、ありがとうございました。
まず市長、国際戦略について、先ほど述べられた答弁のとおり、ぜひ文書化していただきたいと思うんです。この国際戦略は、これが英訳された時に非常に恥ずかしい状況になるんじゃないかなというふうに危惧しています。